20240219‐20240223 入院の記録(後編)

  • 2024/02/19 入院6日目(術後4日目)

ゴム掛けでは固定しつつも一部の歯は動かすように掛けているのだが、歯が動いて噛んでいるバイトプレートと合わなくなってきたようで午後から痛みが強くなってきた。NRS:6/10ぐらい。看護師さんに痛みを訴えてロキソニンに頓服のカロナールを追加してもらってもほとんど効かず、苦しい夜を過ごす。念のため診察で手術創からの感染が起きていないか確認してもらったが、問題なしとのこと。それは良かったんだが痛いのですわ。

ちなみに麻痺・知覚鈍麻は術後からかなり広範囲で起きている。口腔内の口蓋部、歯茎上下、下唇、顎先。左右の頬から顎にかけては油粘土を貼りつけたかのように動かしづらい。鼻と上唇の間(人中)は骨を切っているので全く動かない。つまり顎関節以外はあまり機能していない。開口は指一本分程度。薄いスプーンをそっと口に差し込んで食事をする。でも人間の適応力はすごくて、すぐ慣れてくる。

今日はケネス・ブラナー「名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊」を観た。ベネチアがゴシックホラーの舞台として暗い魅力を放っていた。このシリーズはポアロの戦時中の体験が裏テーマのようになっていて、おそらく続くであろう次の作品でどうなるのか気になる。

 

  • 2024/02/20 入院7日目(術後5日目)

痛みであまり眠れないまま朝を迎える。朝の診察で痛みを強く訴え、可能であればバイトプレートを外したい旨を伝える。先生によればゴム掛けで固定ができていればOKなのでプレートは解除となった。外した途端NRS:3/10ぐらいまで痛みが減った。食いしばりすぎている状態で痛かったのではとのこと。プレートめ〜!

プレートを使わなくなったら歯の根本がガーンと来るような痛みからむずむずジーンとした痛みに変わった。薬で完全に無痛になる訳でもないけど、ガーンよりジーンの方がまだ良い。このジーンと痛いの、親知らずを抜いた時とかこういう痛さだった気がするし傷の痛みってことなんだろうな。

そうそう、今日は朝ごはんにパンが出た。献立にスープがあるのを確認済みだったので、パンの耳はスープに浸してパン粥的に、柔らかい部分はジャムをつけて食べた。初めてまともに噛んで食事したら顎が疲れた。顎は疲れたが久しぶりのパンはおいしくて、嬉しかった。

今日はデヴィッド・フィンチャーファイト・クラブ」を観た。フィンチャー節はやっぱり気持ちいいな。男性がアイデンティティの確立のために暴力という手段をとりカルトとして先鋭化していくという話は、今観ると隔世の感があったが1999年頃の世の中の雰囲気にはぴったりだった気もする。

 

  • 2024/02/21 入院8日目(術後6日目)

NRS:1.5〜2/10。薬が切れると4ぐらいになる。

痛いと評判の抜糸が近づいてきて、プレッシャーだったらしく抜糸してものすごく痛い思いをする夢を見た。そんな予行練習なんてしなくてもいいんだよ。

歯磨きのコツを覚えたおかげで磨き残しがなくなり褒められるようになった。毛先が小さいタフトブラシ、持ってきておいてよかった!

昼にカットしたうどんが出た。

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うどんもおいしいかったけど、うどんのつゆがおいしすぎてため息が出た。刻んだお揚げと甘めのつゆの味、最高〜!思わずつゆまで完飲。うどん自体はしばらく短くカットしないと窒息しそうで、食べるのが危なっかしいなと思った。

夜、横になると下唇のビリビリ感が増す。日中はほぼ気にならない。体勢で神経が刺激されるのかな?あと起き上がる時に首の力で頭をあげると顎に負担がかかるようでめちゃくちゃ痛い。そのため、横向きになって腕をしっかり使って起き上がるようにした。ホットヨガを習っていた時もそうやって動くよう指示されていたのを思い出した。顎だいじに!

今日はギャレス・エドワーズ「ザ・クリエイター」を観る。ツッコミどころが多いのだが、絵面が叙情的すぎて「お、おう…」みたいな置いてきぼり感。とりあえず主人公は人の話を聞こうな?あんまりにあんまりだったので文句を友だちに聞いてもらう。とある場面でのレディオヘッドの選曲の「ちがう、そうじゃない」感。スクリーンで見たら映像に圧倒されてここまでブツクサ言わなかった気がする。

 

  • 2024/02/22 入院9日目(術後7日目)

引き続きNRS:1.5〜2/10。薬が切れると4ぐらいになる。

夜中から寝苦しくて違和感があったが、起きたら術後初の片頭痛。光が辛い!すぐ看護師さんに声をかけて片頭痛の薬を飲んで良いか確認してもらう。幸いOKが出たので飲んだところ、タイミングが間に合ったようで著効。やすらか〜。トリプタン製剤とロキソニンを飲んでしばらくすると顎の痛みがついに0になって衝撃を受ける。血管収縮作用のある薬は傷口の痛みにも効くのだろうか?それとも片頭痛が併発することで傷の痛みが増幅していたのが元にもどったということなんだろうか?不思議。トリプタン製剤は三叉神経の痛み成分の放出を抑える作用機序があるが、顎の骨を切ることで痛みが出るのも同じく三叉神経からなので、そのせいではないかと素人は予想する。

10時ごろに診察に呼ばれ、抜糸。ビビり倒していたが麻痺のせいなのかチクチク程度にしか痛みはなかったが、口を広げる時間が長かったのと緊張したのでやや疲れた。このまま発熱とかしなければ明後日退院できそう!朝の痛み止めで痛みが取れたままなので、このまま痛みゼロで残りの入院期間を過ごしたい。

午後、スコセッシの「グッドフェローズ」を観た。やっと最近スコセッシ映画の文法を楽しめるようになってきた。とても良かった。

続けてガイ・リッチーの「オペレーション・フォーチュン」も見た。ゆるくて入院中に観るにぴったりだった。

夜、バスケ日本代表のグアム戦を見る。川真田選手はロスター入り、しかもスターター!!!!初戦だからなのか仕上がっていない感じのする動きが目立ったが、後半から立て直し徐々に点差を開いていき快勝。最終的に友だちと3人でLINEでキャッキャやりとりしながら見たのが楽しかった。

 

  • 2024/02/23 入院10日目(術後8日目)

朝起きるとパンッパンに顔が腫れてて笑ってしまう。しばらくすると少しスッキリするが、膨らんでシュッとして膨らんでシュッとしてを繰り返して緩やかに元に戻っていくのだろう。昨日は片頭痛の薬セットで一旦痛みゼロになったが、午後からまたNRS:1.5〜2/10ぐらいの痛みが復活。

冷水で歯磨きをしていると昨日抜糸したあたりがめちゃくちゃしみて痛い。うがいしながらグウ〜〜と痛みを堪えた。神経の回復過程で知覚過敏が起きると先生は説明していたが、本当だろうか。本当に回復するのか半信半疑。

昼に「ベイビーわるきゅーれ」を観た。ドラマパートが共感性羞恥を刺激されて「んんん〜」となりつつも、アクションは素晴らしかった。そのうち2も観よう。

術後8日目でも麻痺の範囲はほぼ変わらず。焦らず回復を待ちたい。とりあえずもうちょっと痛みが落ち着いてほしいところ。話はそれからだ。

一日平和に過ごし、明日はいよいよ退院。看護師さんたちの態度も「だいぶ元気になってきた人」の扱いになってきた。予想していたほどピーク時の辛さはなかったが、痛みと鼻血と麻痺がしっかりと長く続き決して楽ではない9日間だった。それでもこまめにメモをしていくと少しずつ身体が回復していくのがよく分かって、自分で書いて自分が励まされた。退院後は一週間自宅で療養するが、仕事に復帰する頃には痛み止めを飲まずに過ごせるようになっていてほしい。